もしも私が合理的だったなら

趣味で経済学を学ぶ記録です。

日本におけるマネタリストとケインジアン

マネタリストについて調べていたら、日本における経済論争を整理した以下の論文を発見した。1990年代の我が国における経済論争の論点が非常によく整理されていると思った。最近ちょっと本業がバタバタしていて、内容について今は踏み込めないが、備忘としてメモしておく。

マネタリストとケインジアン(1)-広島経済大学学術リポジトリ

マネタリストとケインジアン(2)-広島経済大学学術リポジトリ

こういう資料は貴重。

マネタリズムはなぜ衰退したか

先週書いた「リバタリアニズムーアメリカを揺るがす自由至上主義」の感想で述べたように、マネタリズムに興味が湧いたので少し整理してみた。フリードマンへの政策論への興味が第一だが、リフレ派の源流の1つであるマネタリズムを知っておくのはそれなりに意味があると思う。主には、翁邦雄氏による以下の本を参考にした。この本は、2011年のリフレ派が日銀を乗っ取る前に書かれた警鐘の書であり、さすが翁氏といったところ。

ポスト・マネタリズムの金融政策

ポスト・マネタリズムの金融政策

貨幣数量説

マネタリズムにおける物価決定式は、以下のいわゆる交換方程式で与えられる。
 \displaystyle MV=PY
ここで、M:貨幣供給量、V:貨幣流通速度、P:物価水準、Y:実質GDPを表す。これだけでは単なる恒等式(ないし、貨幣流通速度の定義式)だが、マネタリズムでは、以下の2つの仮定を置くことで、MからPへの因果関係を導く。

  • 貨幣中立性(貨幣供給量は、中長期には実質GDPに影響しない)
  • Vは定数

この2つの仮定のもとで、Mが2倍になったとすると、Y、Vは不変であるから、Pが2倍となる。こうして、かの有名な「インフレは常に貨幣的現象」という主張が正当化される。

理論的・実務的欠陥

理論的には、「Vは定数」という仮定が根拠薄弱であった。また、実務的には、Mを中央銀行がコントロールすることに困難が伴った。かつての岩田=翁論争の論点でも、この2つ(+α)が主な論点となっていたように記憶している。マネーサプライを目標とする金融政策が各国で採用されるも、マネーと物価の間の安定的な関係が断絶することで、マネタリズムは支持を失っていく。

ポスト・マネタリズム

マネタリズムにとって変わったのが、ニューケインジアンと呼ばれる一派であり、今も各国中銀の政策はニューケインジアン・モデルに依拠している。しかしながら、ニューケインジアンとマネタリズムの断絶が大きすぎて、私にはニューケインジアンが発生した背景がよくわからない。次は、この当たりを整理したいと思う。また、「マネタリストの不快な算術」から生まれたFTPL理論についても、簡単に整理したい。

マイナス金利政策への懐疑論

日経新聞に、マイナス金利の効果に疑問が出始めているとの記事が掲載されていた。

概要は、以下のとおり、

中央銀行が経済を刺激するために政策金利を0%未満にする「マイナス金利政策」に世界の有力な学者やエコノミストが疑問を投げかけている。  

ということだが、取り上げてられていたのは、エガートソン、サマーズらが書いた論文と、ウリベのネオフィッシャリアンの議論(+早稲田の小枝先生)だ*1

いずれの議論も数年前からあったものだが、その後あんまり真新しい知見が加わったとも思わない。マイナス金利への批判は、①エガートソンらのように、銀行利鞘の縮小を通じた実体経済への悪影響、②ネオフィッシャリアン的な低い名目金利によるデフレ均衡、の2つに大まかに分けられるだろう。

今後、両者の議論についてもう少し整理していけたらと思う。

*1:記事中では、なぜかサマーズの論文ということになり、エガートソンへの言及がなかったが、彼らの論文はもともとはエガートソンが書いていたもので、そこにサマーズがジョインしたもの。一般には、エガートソンの知名度はそこまでないのかなと少し驚いた。

「リバタリアニズムーアメリカを揺るがす自由至上主義」の感想

本書はリバタリアニズムについて語っているが、決して思想書ではない。思想の説明は最低限にとどめ、リバタリアン(リバタリアニズムを信奉する人々)の生態を描いたルポになっている。そこに登場するのは、世界各国のNPO団体等の幹部の面々であり、よくぞここまでリバタリアン・コミュニティに入り込んだなと関心させられた。「アフター・アメリカ―ボストニアンの軌跡と<文化の政治学>」でもみせた著者・渡辺靖氏のフィールドワークにかける並々ならぬ熱意が伝わってくる。

リバタリアニズム-アメリカを揺るがす自由至上主義 (中公新書)

リバタリアニズム-アメリカを揺るがす自由至上主義 (中公新書)

 

 リバタリアニズムとは

リバタリアニズムも一枚岩ではないが、大まかにはノーラン・チャートで理解できる。横軸に、経済的自由の大小、縦軸に政治的自由の大小をとると、リバタリアニズムは、大・大の象限に納まる。いわゆるリベラルは、政治的自由は大、経済的自由は小(公正が優先される)だと整理される。

私は、リベラルには相反した2つのイメージを持っていた。1つは、アダム・スミスの「見えざる手」に代表される「古典的自由主義」。もう1つは、日本の左派が標榜するリベラリズム(社会自由主義)だ。私は長年なぜ全く異なるこの2つが「自由主義」を標榜しているのかがよく理解できなかったが、この図表をみたときにガッテンがいった。

いわゆる日本のリベラルは、政治的な自由を主張する一方、経済については結果の公平性を重視する。一方、古典主義は、政治も経済も個人の自由を最大限尊重する。リバタリアニズムは、基本的にはこの古典的自由主義の系譜にあり、サッチャーやレーガンのネオリベラリズムを経て、より自由を最大限尊重することを主張するリバタリアニズムへと進化を遂げてきた。

マネタリストとの関係

本書では、マネタリストの領袖であったミルトン・フリードマンの子供デヴィッド・フリードマン、そしてさらにその子のパトリ・フリードマンにも取材を行っている。ミルトン・フリードマンの意志をついでか、親子三代に渡って、リバタリアンなのは興味深い。

ミルトン・フリードマン自身は、サッチャリズムやレーガノミクスの理論的支柱として活躍した。マネタリズムの主張は、財政政策は最小に金融政策はルールに従ってというものであった。その後、マネタリズムは金融政策の議論では敗北した一方、経済思想としてはリバタリアニズムとして生き残っている。これまでマネタリズムは死んだ分野だと思い、真面目に勉強したことがなかったが、はからずも本書を読んで、マネタリズムへの興味が湧いてしまった。

私はリバタリアニズムになりうるか

答えはノー。自由を素朴に信奉してきたが、さすがにリバタリアニズムは極端に過ぎる。性善説を信じきれるのならば、リバタリアニズムもいいのかもしれない。しかし、到底、うまく行くとは思えない。上述のパトリ・フリードマンは、洋上にリバタリアンの街を作ろうとしているようだが、どこかで必ず人々の自由を制限しなくてはいけなくなる局面がくるのではと思う(根拠はない)。

最近の関心

すっかり更新が途絶えていましたが、ぼちぼち書き始めようかと思います。更新してない間は、転勤があったりして、慣れない仕事に右往左往してました。この間のマーケットは、中国発のショックがあったりと、どんどん暗雲垂れ込めてますね。おかげで、僕の資産も目減り気味で、投資熱が冷め気味ですが、経済学の勉強は続けようかと思います。

自分用のメモの意味も込めて、目下の関心を書いておきます。

マクロ

  • 日銀の出口と財政の持続性の関係。
  • 物価の形成メカニズム
  • マネーストックの意味。マネーと物価の関係。
  • 大停滞の議論。
  • ゼロ金利制約。

計量

  • Functional Data Analysis。
  • Time Varying FVAR。そもそもFVARの勉強からしなきゃだけど。

DynareのモデルをLatexに出力する方法

Latexの入力をなるべく短時間で済ませたいとき、便利。とても簡単です。

ModelLatexOutput - DynareWiki

以下のコマンドをいれるだけ。

write_latex_dynamic_model;

Dynareの中のalphaという変数を、texの中ではギリシア文字にしたいときは、変数宣言のときに、以下のように記述しておくだけ。

var alpha $\alpha$, eps $\varepsilon$;

Staticなモデルを出力したいときは、

write_latex_static_model;

Bayesian Multivariate Time Series Methods for Empirical Macroeconomics

すっかり参考文献や資料のメモをする場と化している当ブログですが、今日は、Koop and Korobilisの表題ペーパー。60ページぐらいとコンパクトですが、主な手法を抑えていて、かつ、著者のサイトでコードが公開されているので、勉強には打ってつけかと。

http://www.rcfea.org/RePEc/pdf/wp47_09.pdf

著者のサイト(コード置き場)
Gary Koop's Dept webpage


Koopは、Bayesianの本を他にも書いていますね。どっちか読んでみようかな。これらの本も、それぞれサイトで、コードが公開されています。


Bayesian Econometrics

Bayesian Econometrics

http://www.wiley.com/legacy/wileychi/koopbayesian/



Bayesian Econometric Methods (Econometric Exercises)

Bayesian Econometric Methods (Econometric Exercises)

http://web.ics.purdue.edu/~jltobias/bem.html